合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
「あんたが初めてだよ。人の宿題やってやろうなんて奇特なやつは」

「……」


好きでやってるわけじゃないっつーに。

あたしはじとっと塔也を見上げた。


「……あんた、N高生でしょ。

これくらいの宿題、余裕でしょ」


塔也は形の良い眉をすっと上げてあたしを見下ろした。


「……N高って、なんで知ってんの?」


面白そうに、片方の口の端をつり上げる。


「オレに興味でもあんの?」

「違うってば!そうじゃなくって。

うぬぼれんのもたいがいにしなさいよねっ」


あたしは即答した。



「布団を取りに部屋に入ったときに、制服があったから」

「……ああ」


塔也は眉間にしわを寄せて、つまらなそうに頭をポリポリ掻いた。
< 102 / 118 >

この作品をシェア

pagetop