さようなら。
嬉しさで涙が出てきて

話すことも頷くことも

できないあたしは

テツ先輩の袖を握って

ただただ

泣いていた。

テツ先輩も

さっきよりも

強く抱きしめただけで

なにも言わなかった。

なにも言わなくても

テツ先輩の『好き』が

伝わってきて

あたしの『好き』も

伝わってて

ずっとこうしていて

離れたくなかった。

「浜谷のことは

心配しなくていいから


とりあえず今日は

送ってくよ」

送ってくって言って

あたしから一度離れた。

離れたくないのに……

もっともっと

近くにいたいのに……

「『テツ先輩』なんて

もう言わなくていいから

あとタメ語でいいよ」

「うん……」

「手、繋ぐ?」

「うん」

離れたくないって

あたしの気持ちが

わかってるみたい。
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