さようなら。
日差しが地面に刺さる

熱い暑い夏があっけなく過ぎた。

長い夏になってほしかった。

甲子園予選――

全国ベスト4の学校と

一回戦で戦ったうちの野球部は

七回コールド負けで

最後の夏を終えた。

みんながマウンドで泣いていて

哲は深く帽子をかぶって

あたしたちが出会った

あの日と同じように

深く深く下を向いて

一人で肩を震わせていた。

応援団の前を通る野球部は

見ているあたしたちも

思わず硬直してしまうくらい

静かに歩いて行った。

『て……』

1番後ろで1番下を向いている

哲がやけに小さく見えて

やっぱり言えなくて

呼びかけた名前は

周りのざわめきに消えた。
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