さようなら。
そんな些細なことにも

敏感になってしまう。

気が付いてしまうたびに

哲の夏が終わったと

言われている気がして

目をそらしてしまうの。

『おーい

バス乗れよー』

次々と部員たちがバスに乗る中

哲は足取りが重そうで

あたしが泣きたくなった。

『哲っ……

負けちゃったけど……

だけどかっこよかったよ

すごくすごくかっこよ……』

言葉が途中で遮られた。

……あの日とは反対に

哲があたしに寄り掛かる形で

すごく弱くて、でも強く強く

あたしを抱きしめた。

時間が止まったみたいで

あたしたちしかいないみたいに

とても静かだった。

あぁ……

好きな人の弱さって

こんなにも重いんだ。

だけど重いはずなのに軽い。
< 83 / 150 >

この作品をシェア

pagetop