闇夜の数だけエゴはある
既に野須平の爪は俺の腕から離れていた。

力なくダラリとぶら下がっている。

体が時折痙攣し、顔面からはとめどなく流血。

既に口以外は顔のパーツの確認は難しい。

その口が、何やら言語不明瞭に音を発している。

呪詛か。

命乞いか。

発狂の末の意味のないうわ言か。

判断は出来ない。

…まぁそんな事はどうでもいい。

それよりも。

「野須平だったな」

俺はもう一度、彼を片手で持ち上げた。

「一つ言っておかなきゃならない事があるんだ」


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