闇夜の数だけエゴはある
まだ立ち上がれないままの儚。

そんな彼女に向かって突進した武羅人は、容赦なく彼女の上に馬乗りになる。

そして。

「が…!」

彼女の細首を両手で掴んで締め上げた。

絞首。

最初の手刀で仕留め切れなかったとわかり、武羅人は迷う事なく儚のとどめを刺すべく追い打ちをかけていた。

…徹底している。

彼は嬲らない。

彼は遊ばない。

まさしく野生の獣。

相手が男だろうが女だろうが、強者だろうが弱者だろうが。

闘争の際には全力を以って相手を仕留めにかかる。

…儚は背後から武羅人を襲った。

不意打ちで武羅人を仕留めようとした。

一撃の下に武羅人を殺そうとしたのだ。

そして武羅人に対する『殺す』という行為は、彼の自由を奪うという究極の禁忌である。

そんな行為を彼の『エゴ』が許す筈がない。

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