闇夜の数だけエゴはある
ミシミシと。

武羅人の両手が儚を締め上げる。

私はそれを見ながら、彼の狙いが絞殺ではない事に気づいた。

絞殺すら、彼にとっては嬲る行為に過ぎない。

全力とは、一思いにとどめを刺すという事。

という事は、彼が儚の首を締め上げているのは、絞殺ではなく頚椎をへし折る為。

時間がかかる上に仕留め損なう可能性も少なからずある絞殺よりも、確実に絶命させる事のできる頚椎破壊を狙う。

首をへし折られて生存していられる者など、存在しないのだから。

…細首の軋む音。

武羅人は、全身が小刻みに震えるほど力を込めていた。

窒息か頚椎破壊か。

どちらが早いかというほどの力の込めようだ。

残念ながら儚にはもう反撃の手段はない。

のしかかられて完全に動きを封じられている。

できる事と言えば、息絶え絶えに言葉を紡ぐ事くらい。

その唇から。

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