闇夜の数だけエゴはある
屋上から見える渡蘭市の景色を見ながらボンヤリ考え事をする。

…今朝は儚が随分突っかかってきた。

まぁ仕方ないか。

彼女は杖縁家に…というより私に恨みを抱いている。

昨夜のような挑発的な行動をとれば、自然と気分を逆撫でにされてしまうのだろう。

それにしても昨夜は少々派手にやりすぎた。

一晩で七人なんて、ちょっと羽目を外しすぎたかもしれない。

少し『夜回り』をサボっていたせいで、いつの間にかあんなにも多くの蛆虫がこの街に蔓延っていたのだ。

気に入らない。

確かにこの街は『血濡れの楽園(エデン)』と称されるほどの場所だ。

理想郷を求めて、同胞が集まってくる。

しかし、誰も彼もここに住まわせてやれる訳ではない。

秩序を乱す者、何より私の『エゴ』に逆らう者。

そんな連中には命を以って贖ってもらう。

それがこの渡蘭市最強の、杖縁家の令嬢たるこの杖縁梓の決めた掟だった。

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