闇夜の数だけエゴはある
この屋敷には地下室があった。

まぁ地下室とは名ばかりで、実際は各種拘束具の揃えられた牢屋や拷問部屋と言った方が正確だけど。

私はそこに梓を監禁して、武羅人に責めさせていた。

目的は彼女の精神の陥落。

徹底的に責め上げ、私に絶対服従を誓うまで責め苦を味わわせる。

『吸血』すれば、そんな必要はない。

あれは強制的に虜にできる、究極の精神支配だ。

けれど、私は梓に対しては敢えてそれをしなかった。

簡単な理由だ。

彼女に絶望と屈辱を与えたかったから。

これまで渡蘭市…楽園に君臨していた最大勢力の当主。

そんな彼女を陥落して、身も心も雌狗に成り下がらせる。

それが『吸血』をしない理由だった。

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