闇夜の数だけエゴはある
梓は完全に私に服従の意思を示したようだった。

一見するとそのように見える。

残念ながら心というのは、その深淵まで見透かす事は難しい。

たとえ親兄弟だろうと、本心というのは決して把握できないものだ。

だから梓が服従したというよりは、裏切る可能性が低くなったと解釈するのが妥当だ。

私には『吸血』で狗にした武羅人がいる。

謀反を起こしたところで、武羅人がほぼ確実に阻止するだろう。

仮に私の命を奪う事に成功したとしても、梓はまだ残る勢力…野須平しとねに挑まねばならない。

ここで叛旗を翻すのは彼女にとっても得策ではない。

私に牙を剥かない限り、私は梓を狗扱いとはいえ、仲間として見る。

その方が梓としても利用価値があるだろう。

今はそれだけでよかった。


< 138 / 221 >

この作品をシェア

pagetop