闇夜の数だけエゴはある
同胞が殺られた。

最早連中が動かない理由はなかった。

左右から一斉に押し寄せてくる群れ。

誰もが皆狂気に目を血走らせ、目前の獲物を引き裂き、食い千切り、惨たらしく殺す事だけを考えている。

人外の暴徒。

それは興奮して理性をなくしている訳でも、集団心理に駆られている訳でもない。

心の底から『殺戮を愛し』、『冷静に欲望を実行する』者達。

人間がゴキブリを罪悪感なしに殺すように、彼らは同族を、人間を、何の感情も持たずに殺戮する。

彼らにとって殺戮は日常なのだ。

憎悪も憤怒も激昂もなく、ただ平然と殺戮を行える。

ならば。

「へっ」

躍動する武羅人の肉体が群れの中に飛び込み、無造作に亜吸血種の体を引きちぎる!

…彼らが憎悪も憤怒も激昂もなく、ただ平然と殺戮を行えるのなら、武羅人はその殺戮で『エゴ』を満たす。

ある意味連中よりも性質の悪い存在と言えた。






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