闇夜の数だけエゴはある
亜吸血種。

それは時代の流れが生み出した混沌の申し子達。

太陽と、十字架と、銀の武器を弱点とする闇の眷属…人外、吸血鬼。

彼らの一部は教会に、祓魔師に、異端者殲滅専門職に追い詰められながらこの渡蘭市に逃げ込んだ。

太陽を禁忌とする人外が、この南の地に追い込まれた事は絶滅を意味する。

地下深くに潜伏し、息を殺し、殲滅される事を、日の光に焼かれる事を恐れながら数百年の時を過ごした。

永劫とも思える年月。

しかし吸血鬼達はそのまま地下深くに潜り込む事をせず、その風土に根ざした独自の進化の道を選んだ。

蝙蝠に変化する事はできなくなった。

高い魔力を駆使する事はできなくなった。

古の魔術を行使する事はできなくなった。

だがそれと引き換えに、彼らは太陽を克服した。

日の下に姿を晒してももがき苦しむ事のない、新たなる闇の血族。

私達は以降吸血鬼の亜種…亜吸血種と名乗り、この渡蘭市を『血濡れの楽園』と呼び、人知れず蔓延る事となったのだ。


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