闇夜の数だけエゴはある
艶は拳をかわさない。

だがまともに受ける訳でもなかった。

拳を食らうよりも早く、巻き込むような動きで襟を掴む武羅人の腕を引き込み、そのまま彼の力を利用して背負い投げ!

武羅人は見事なまでに投げ飛ばされ、外の日本庭園…その中の、錦鯉を泳がせている池の中へと叩き込まれた!

「…!…」

息を飲む。

そりゃあ武羅人の攻撃は直線的だった。

だけどああも見事に彼の攻撃をいなすなんて。

柔よく剛を制すとはいえ、相手の力を利用すれば投げられるというものでもない。

「ぶはっ!」

武羅人が池の中から顔を出した。

彼はザボザボと池の中を歩きながら、私に目線を送る。

「梓、儚のとこに行ってやれ」



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