闇夜の数だけエゴはある
一歩。

梓が部屋の中に入る。

それだけで、しとねは私から離れて距離を置いた。

一見すると、しとねが梓を恐れているかのように見える。

…事実そうなのかもしれない。

同系統の能力の使い手である二人。

『旋』も『飛翔』も、間合いや軌道が掴みにくい攻撃だ。

蹴りである分、梓の方が射程は広いかもしれない。

距離を置いたしとねの判断は正解と言えた。

「大丈夫?儚様」

「はい…助かりました…」

私は素直にこの場を梓に任せる。

正直、私では本気を出したしとねには対抗できない。

私の出る幕があるとしたら、梓が窮地に立たされたその時のみ。

その時まで、私はこれから始まる闘争の行く末を見守る必要があった。

< 184 / 221 >

この作品をシェア

pagetop