闇夜の数だけエゴはある
『飛翔』の能力の要とも言える片足を切断された。

亜吸血種の再生能力なら再び足を繋げる事も可能だけれど、そんな時間を与えてくれるほど、しとねも優しくはない。

「軽く交錯させるだけでこの威力なら…」

まだ立ち上がる事さえ出来ない私の目の前で、しとねは大きく手を振り上げる。

「全力で『旋』を撃ったらどうなるんだろうねぇ…?」

…戦慄せずにはいられなかった。

どんなに無様でもいい。

自由に動く両手で床を這いずり、何とかしとねの射程圏内から抜け出そうと足掻く。

そして足掻けば足掻くほど。

「私をたっぷり愉しませておくれ…?」

しとねの嗜虐心を満たすだけだった。

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