闇夜の数だけエゴはある
弾けるように、儚が私に襲い掛かる。

そのスピードは、とても常人の動体視力では捉え切れない。

残像が残るほどの高速。

私はその突進に合わせて。

「がっ!」

一撃をくれてやった。

儚が『残像が残るほどの動き』ならば、私は『残像すら見えないほどの動き』。

それは私が学園の屋上で、虜達を葬り去った時の動きだった。

儚には私の右脚、その膝から下が『消失』したように見えた筈だ。

その速度で放たれた私の脚は、儚の体を袈裟懸けに斬り、多量の出血と共に地面に叩きつけた。

「くっ…!」

這い蹲ったまま、儚が私を見上げる。

「ぬかったわ…杖縁は…『飛翔』の能力持ちだったですね…」

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