闇夜の数だけエゴはある
第三夜

無様に地面に這い蹲ったままだった。

梓の『無影の蹴撃』をまともに受けて、左肩から右脇腹にかけて大きく斬られている。

杖縁の一族が得意とする『飛翔』の能力。

その能力を十二分に生かした強烈な一撃。

人間よりも遥かにしぶとく、人間よりも遥かに強靭な亜吸血種の肉体を一撃でここまで破壊できるのだ。

その威力は推して知るべきだろう。

如何に亜吸血種の並外れた再生能力を以ってしても、すぐには回復しない、動けない。

それ程の肉体損傷。

そんなダメージを受けて横たわったまま、私は見ていた。

私に敗北の味を教えたにもかかわらず、表情を強張らせる梓の姿を。

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