闇夜の数だけエゴはある
仕掛けておきながら女は逃げ腰だった。

すぐさま後方に飛び退り、間合いを取ろうとする。

だがそれ以上に俺の突進の方が速かった。

零距離。

確実にこちらの攻撃の届く距離。

それを。

「!」

女の蹴足が閃き、俺の出足を止める。

咄嗟に片手で防御した。

しかしその防御した腕がたやすくへし折られる!

「……」

俺は立ち止まり、おかしな方向を向いてぶら下がる自分の腕を見た。

「…嘗めないで頂戴。杖縁の『飛翔』の脚は、雑種如きじゃ防げないわ」

敵も傷つける事ができる。

その事を理解したのか、女が少し冷静さを取り戻したようだった。


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