闇夜の数だけエゴはある
「じゃあな」

今度こそ本当に用はないとばかりに立ち去ろうとする武羅人。

私はそんな彼を呼び止める。

「何だ?」

「待ちなさいよ。今車を回すから」

私は携帯を取り出し、屋敷へと電話をかける。

執事が待機している筈だ。

どの道こんな格好では歩いて帰れない。

リムジンで迎えに来てもらおう。

「迎えでも何でも勝手に呼べばいい。俺が待っている必要はないだろう」

「馬鹿ね」

私は武羅人をキッと睨む。

敗者の態度ではなかったが、この際それはどうでもいい。

「貴方も家にくるのよ」

「何で?」

問いかける武羅人に、私は胸を張った。

肌をさらしている事も忘れて。

「不本意とはいえ、私は貴方に助けてもらったわ。恩義は確実に返す。借りは借りのままで終わらせないの」

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