闇夜の数だけエゴはある
それは納得のいく説明ではなかった。

「知ってどうする?」

「……」

その返答を、梓はしない。

そうだろう。

出来ない筈だ。

「代わりに言ってやろうか?」

俺は嘲りの笑みを浮かべた。

「お前にとって使えそうなら『狗』に引き込む。お前にとって危険分子ならばこの場で屠る。お前の意にそぐわなくてもこの場で屠る。つまりな…」

俺はおさめた筈の殺気を再び強く発した。

「お前はお前の『エゴ』で俺を飼い慣らすつもりなだけだ。そして言っただろう…俺は俺の自由を奪う奴はすべからく殺す…それが俺の『エゴ』だとな」

「……!」

梓が後ずさる。

俺は前傾姿勢に身構える。

喉笛に食いかかる獣の如き構えで。

そして一気に間合いを詰めて…!

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