天国へのエレベーター
お父さんとケンカした時にも、キラキラ光る涙を落してた。
それはとっても悲しいことだったから。
そんな時の涙はすぐに止まって、お母さんは笑顔になってくれる。
だけど今日は、何粒もの涙がお母さんの目から次々に溢れては流れていく。
「おかあさん……かなしいの?」
悲しそうなお母さんの頬に手を伸ばすと、お母さんは笑った。
「うん、ちょっと悲しいだけ。おじいちゃんはいつでも皆の側にいるから、ちっとも寂しくないんだよ?
だけどね、今日だけはちょっと泣かせてね」
「うん、もえもさみしくないよ」
おじいちゃんは「ガン」という病気だった。
お母さんも萌もまだ1歳だった妹も、毎日のように病院に行っておじいちゃんと話をした。
おじいちゃんがまだ元気だった頃には、よくいっしょに近くの小さなお店まで行って、イチゴ飴を買ったり、一緒に時代劇を見たり。
時には、おじいちゃんの三輪車の荷台に乗って、山に遊びに行くこともあった。
どんぐりを拾ったり、落ち葉を集めたり……。
川に行ったり、田んぼに行ったり……。
おじいちゃんはたくさんの遊びを萌に教えてくれた。