親友、寺に消ゆ
静寂の夕方
雨が降ってきた。

さっきから急に曇り始め、これは一雨ありそうだなと思ってたのだが予想はまんまと的中した。

ベランダに出て物干し竿から洗濯物を取ると部屋に戻り、それを無造作に近くのベッドの上に放り投げた。

十畳1ルームの部屋を見渡してから、ソファに移動して座ると、雨音がまた一段と強くなった。

カーテンが開け放たれた窓から見える風景は、もやのかかった東京の暗く淀んだ空を突き刺すように、池袋サンシャインが中心にそびえ立っている。

東京の街だとは到底思えない静かな時間が部屋の中で流れていた。

振る雨が全ての音を洗い流してしまっているかのようだ。

こんな時に決まって私はある一つの思い出が鮮明に蘇る。


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