親友、寺に消ゆ

豹変

私は冷静を装い、え?四つしかないよ。と言い、がんばったけど自分は見つけられなかったと付け加えた。

そんなはずはないとユッキが何度数えても十字架は四つしかなかった。

立ったまま頭を抱えたユッキに私はもう遅いから帰ろう。直ぐ真っ暗になっちゃうよと声をかけた瞬間だった…。

私の耳にひどく低いくぐもった声が聞こえた。

「こわした…」

ユッキは無言で頭を抱えていた。

私はユッキに何か言った?と聞いてもユッキは答えず微動だにしない。

そしてまた…。

「こわした…」

私は震えていた。

今まで聞こえたと思っていたのだが違うのだ。

声は私の頭の中に直に響いていたのだ。

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