親友、寺に消ゆ
私は目を瞑ったまま耳の穴を塞ぐ指に力を込め、息を少しづつ吸った後それを一気に言葉にして吐いた。

「許してくれ!!」

私が怒鳴るように言うと部屋の中に静寂だけが残った。

私は恐怖のあまり未だ目も開けられずしばらくの間、静寂の時の中に身を置いてじっとしていた。

耳を塞いだ指の力を少しゆるめると外ではまた雨が降ってきたようだ。それも強い。目を開けなくても豪雨だという事が分かる。

ただ少し落ち着くまで私は同じ体制でその場にしゃがんでいた。

もちろん目は開けず、耳を塞ぎながら。

そうしていると静寂を切り裂いて、電子音が聞こえてきた。

どうやら携帯が鳴っているようだ。

だが直ぐに音は鳴りやんだ。

メールが着信したのだろう。

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