親友、寺に消ゆ
ダメだ。見てはいけない。これはユッキの仕返しなんだ。

そう言い聞かせても体は勝手にベランダをむき、じわりじわりと私は顔を上げて行った。

私がベランダを見据えると大きな稲光と共にその姿が漆黒の闇に浮き上がった。

服の腕を通す左右の通し口に物干し竿が一本、横一文字に通されて吊されている人間が見えた。

……ユッキだった。

その姿は正に処刑されたキリストのように竿と体で十字架を形作っていた。

次の稲光で見えたのは竿とユッキの体をくくっている血がついた縄だった。

私は瞬時にその縄があの日、自分が壊した十字架の縄だと理解した。

横殴りの雨がユッキの体を叩きつけ稲光の明滅が激しくなる中、ユッキの姿が常に見えるようになった。

ユッキは吊されながら後ろに傾いていた頭をゆっくりと正面にまで持ってきて、私と目が合うと言った。

「良かったね。十字架一つ見つけられて」

私は声一つ上げられず気絶した。

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