えんどう豆のゆくえ
「美姫……ちゃん」

「みき……ああ、おったおった。花沢美姫ちゃんやろ? おっとりした、可愛い感じの」

 そう軽く言う竜は、ふと私の顔を覗き込んで目を丸くした。

 「どうした?何泣いとるん?」

 頭をぐしゃぐしゃかき回しながら、笑ってそう言ってくれる。泣く子どもに理由を聞く人みたいで、ちょっと大人っぽい。
 
 竜はいつも私の数歩先にいて、鈍くさい私がつまづいて泣いたらこうして一緒にいてくれる。

 だから竜は、ずっと私の特別な人になっている。恋とか愛とかとは、また別の。

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