えんどう豆のゆくえ
「竜、もう大丈夫やから。ありがと」

 嗚咽がやっと言葉になた時には、けっこうな時間が過ぎていた。

「何か嫌なことされたんか、美姫ちゃんに」

 笑顔に見えない笑顔で、ゆるゆると首を横に振った。

「美姫ちゃんは、いい子やったよ。ほんまに、こんないい子が実在するんやなあって思うくらい。ただ、私が嫌な子やっただけや」

 どういう事だと言うように眉をひそめ、無言で先を促す竜に、私はあの時のことを少しずつ、話し始めた。
 
 誰にも言ったことのない、わたしの隠し事のひとつを、取り上げて粉々に砕いた。

< 4 / 35 >

この作品をシェア

pagetop