えんどう豆のゆくえ
 私の気持ちを察してくれたのか、竜がさりげなく

「何ぼーっとしとんねん風馬、可愛いやんなぁ?」
と茶化しながら聞いてくれた。よく気の回る奴だと心の中で感謝する。

「うん、まあ可愛いんとちゃう? 」

 もともとよく喋る方でない風馬はそれだけ言った。「言い捨てる」の方がしっくり来るくらい、乱暴に、長い前髪を鬱陶しそうに払いのけながら。
 
 それだけなのに、あの子のことを可愛いと言っただけなのに。不安で不安で堪らなくなった。風馬がどこかへ行ってしまう気がした。
 
 竜の冗談にも生返事をし、先生の声で席に着いた。「花沢美姫です、よろしくお願いします」と当たり障りのない自己紹介をするその子を、複雑な気分で眺めた。
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