えんどう豆のゆくえ
 「めっちゃ可愛いやん」

 私の隣にいた親友ランが、短くそう表現した。あまりに素直にそんなことを言えるランはすごいと思った。

 私達のクラスには自分が一番可愛いとそれぞれが思い込んでいる女子三人組がいて、そんな子達が自分より可愛い子の登場を気にしないはずがなかったのだ。

「ほんまや、あんな可愛い転校生初めてやな」

 竜の目線は、一学期に転校してきた倉田くんの方にあった。彼が転校してきたときもいろんな噂が飛び交ったけれど、結局は平凡な、スポーツ刈りの野球少年だったから。
 
 別に竜が転校生を気に入ろうが、悪いけれどどうでもいい。でも、私の気がかりは大好きな風馬だった。


風馬は女の子になんて興味のない子だと思っていたから今まで安心して片思いしていられたけれど、男の子が十人いたら十人全員が可愛いと言いそうな子が現れてしまっては、今まで通りに行かなくなるかもしれない。
< 8 / 35 >

この作品をシェア

pagetop