十夜
あたしはその手を遮った。

「こんなあたしにあげるより、奥さんに何か勝ってあげな。」

普通だったらこんなことはしない。
どんな事情があろうとお金だけは貰う。
でも、コノときだけは受け取れなかった。

「大丈夫だよ。今すぐ死ぬわけでもない。俺、金持ちだから。」

藤原は温かい瞳で笑う。
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