十夜
携帯のボタンの音だけが聞こえるこの廊下で、あたしは彼の姿をじっと見ていた。

「はい。」

「ありがとう。連絡しても良い?」

「全然大丈夫。」

彼はにこっと微笑むと暗がりの中、竹下を追って出て行った。

彼の姿が…頭から離れない。
こんなの久しぶりだな。
ここまであたしを虜にできる人。

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