CURODO

偶然

「実は」
 と言ったところで、会話が打ち切られた。ドアがぶち破られて、スーツ姿の男達が銃を持って現れたのだ。これは何かのどっきりカメラか?外国語で携帯に向けて何か喋っている。これは・・・何となくだがイタリア語か?
「逃げるわよ!!」
 真矢が、銃を凝視していた俺の手首をつかんで窓をがらりと開けた。かと思うと、迷いもなく飛び降りやがった。ちょっと待て、ここは2階だ。手首をつかまれていたせいで、俺は仰向けに落ちた。
「なぁっ・・ぐえっ!」
 下が見えないせいで恐怖心が倍増だ。とかそういう考えが浮かぶことはなかった。落ちる時間はほとんど一瞬だったからな。
ドタタンッという音と共に背中を打った。アパートの駐車場から出てきた軽トラックがたまたま通って、その荷台に落ちたらしい。直後、銃弾が俺の部屋の窓から雨のように降り注いだ。見るとさっきの男達が発砲している。
「な、何だぁ!?」
 軽トラの運転手らしき人の声が聞こえた。荷台から乗り出して運転席を見ると、声の主は太一だった。太一は何が何だか分からない顔をして、それでも俺達二人と銃声と火花が飛び散っているのを見ると、コクンと力強く頷いた。何を理解したんだろう。
「つかまってろよ、二人共!」
「うぉおっ!」
「きゃっ!」
 アパートの敷地内を出た時、突然襲った衝撃で体が後ろに強く引っ張られた。軽トラが猛スピードで走りだしたのだ。上手いこと弾を避けて走りやがる。こいつは何者だ。ってうわ、なんか走って追って来やがった!他にも隠れていた奴がいたみたいだ。相変わらず乾いた銃声が鳴り続ける。近所迷惑にもほどがある。
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