-月の果てreplay story-


「ソフィを好きには、させない」


キルトは、トラキアにそう言うと

踵を返して



「戦いの準備だ、急ぐぞ」

と背中からトラキアへ言った。



───…ソフィ、



トラキアは、「あぁ」と頷くとイノに別れを告げまた会いに来るからと足早に店を飛び出し、馬に乗った。



君が俺から逃げていたとしても



イノと会話している間に先に馬に乗っていたキルトとデカルトは、

それを見計らって馬を走らせる。



イノは、荒々しく街から飛び出していくキルト一行を不安そうに見守った。




捕まえてみせるから───…


絶対に。



「トラキア、ごめんな?」



祈りは、決心に変わる。

願いは、胸に閉じ込めて



イノは、つぅっとひと粒の涙を落とした。


「うち、悪い子や…」


イノは、服で隠していた

肩にある黒い薔薇と

黒い蜘蛛の巣の刺青を強く握りしめた。



いつか叶う日のために──…
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