たとえばそんな静寂の中で
―橋渡しか、哀れみかー


考えるだけでぞっとする。

誰もが口には出さないんだ。人間は優しい嘘がつけるから。

「タイプが違うご姉妹ですね」か「似てないですね」で。


あたしは、卑屈、なんだろうと思う。
お母様が、あたしを疎んじるとまでいかなくてもおねえちゃんに比重を置いてしまうのはしょうがないことだと思ってる。


うちは結構な旧家でお父様は手広く事業を営み、あたしたちはお嬢様と言ってもいい。

うちにはよく手入れされた日本庭園も茶室もある。

テレビの取材だって来たことがあるくらいだ。

そのときはおねえちゃんと家中、紹介をしてまわった。

楽しみにしてオンエアを見たのに、映っていたのは和服を着て茶室でお茶をたてる

お姉ちゃんの姿、あたしは後ろで立っているのがほんの数秒映っただけだ。


・・・お手伝いさんにしか見えなかった。



最後の手段で、あたしは「腹違い」という言葉に憧れた。

異母姉妹なら何もかもに説明がつくのだと思ったのだ。

そう思いついて市役所に走った。

戸籍謄本を取り寄せて、あたしたちはまぎれもなく姉妹であることを確認したのだった。




とにかく、あたしは自分だけの場所が欲しかったのだ。


おねえちゃんが嫌い。

いや、嫌いじゃない。

いなくなればいい。

いや、いてほしい。


自分の中に渦巻く感情を言葉にするのは難しい。


ただ、あたしはおねえちゃんと比べられたくないだけだ。


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