たとえばそんな静寂の中で
教壇の後ろの大時計が9時10分を指して、講義室の前のドアが重々しく開いた。

カツリカツリとヒールの音を響かせて、講師が入ってきた。


ざわめく教室が水を打ったようにしんとなる。

その静寂は教室全体に糸をつたうように伝わってゆき、張り詰めた空気が教室を支配した。

ばさりとファイルを開いて、ゆっくりと顔を上げる。


静寂が臨界点に達して、幾千の瞳が講師を見据えた。


値踏み。



幾千の瞳のうち、数百は女の目。



「北条です」


おねえちゃんはまっすぐに前を見て、挑戦的なほど強い視線で数百の瞳を見返した。
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