たとえばそんな静寂の中で
「北条先生」

よく通る声が教室に響いて、あたしは片付けかけたノートを手にして声のするほうを見た。教室を出ようとしたおねえちゃんもそちらをみる。

慶介が教壇に手を掛けておねえちゃんに話かけていた。


「俺にもそのプリントください」

「あなた、名前は?」

「三井慶介」

おねえちゃんはプリントを一枚抜いて慶介に渡した。

「遅刻は欠席とみなします。今日はあなたは欠席扱いですから次回の講義は遅れないようにしてください」

「先生、俺カウンセリング興味あるんです。今ここで先生を予約しちゃおうかな」

「予約については手続きを踏んでください。それにスクールカウンセラーは私だけではなくて、私の所属する研究室の所員が担当しますから、最初から私を指名することはできませんよ」

「予約したら、その時間は先生を独り占めできるんじゃないんだ・・」


おねえちゃんは慶介の最後のセリフには返答しないまま、重そうな資料を携えて教室を出て行った。


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