たとえばそんな静寂の中で
「房枝ちゃんが行きたいっていうなら行かせてあげればいいじゃないですか?もう20歳過ぎの大人だし、生活費だって自分のアルバイトでまかなえるでしょう?後は大学の学費だけ出してあげればいいじゃないですか」


いつからだろう?


お母様があたしをまっすぐ見ようとしないことに気づいたのは。


お父様が腫れ物に触るようにあたしに接するのに気づいたのは。


具体的に何があったわけでもない。


ただ、薄衣に包まれるように私を取り巻く空気が徐々に変化していた。



認めたくはなかった。



でも、あたしはこの感情の正体を知っていた
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