〜お伽話〜
とてもじゃないけど、外見が可愛すぎて剣を売っているとは思えない。
ドアを開けっぱなしにして、『営業中』の札をかかげる。
そこに、勢いよく数人の勇者が飛びこんできた。
「剣を売ってくれ!!」
選ばれた証と呼ばれる、額の紋章や髪の色や瞳の色。
これだけ揃うと、何が真実なのか分からなくなってしまう。
「どうしたんですか?」
「王からの情報を見てないのですか?」
勇者と商人の無駄話は、つきものだ。
目の色が少しずつ変わっていく勇者が、控え目な笑みを浮かべた。
「アルカ姫の居場所が分かったのです」
後の勇者が、次々と剣を選んでいく。
それに急かされるようにして、話してくれていた勇者も剣を頼んで帰った。

一段落してから、俺は店を密かに抜けた。
向かう先は、ただひとつ。
王からの情報がはられた場所へ行くと、そこにはまだ人だかりができていた。

『アルカ姫の居場所は『銀翼の砦』』

「『銀翼の砦』…」
言葉を、失う。
『銀翼の砦』別名『生と死の境』。
伽国の「砦森」最奥にある、城の事をそう呼んでいた気がする。
今まで数々の勇者が、その城に挑んだ。
だが、その勇気も虚しく帰ってきた者はいない。
中の様子は、誰も知らない。
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