〜お伽話〜
「これ、嘘なんじゃねえの?こんな金がどこにあるってんだ」
「……」
バーディの言葉が途切れた。
うつむいて唇を噛むバーディの目には、うっすらと涙が浮かんでいるような。
「…泣くなよ」
「お前が信じてくれないなら、俺が全部悪いんじゃん……」
意味不明なバーディの言葉に、眉をひそめる。
今にも大声を出して泣き出しそうなバーディ。
俺は、何となく紙を裏返してみた。
何も書いていない裏側。
その右下には。
「25蘭…?」
紙の値段だろうか?
庶民の一日の食費のような値段だな。
…そんな値段の紙を使ったこの情報紙を、タダではりだすだろうか?

ありえない。
断じて、ありえない。

つまりバーディは、俺が持たせた今日の食費でこれを買ってきたのだ。
「…バーディ」
「だってさ、ラティストが信じてくれないから」
震えた声が、俺に対しての怯えを表している。
「これ、どうするんだ?俺達いくら儲かってるっつっても、一日の食費は抜けたらもうないぞ」
バーディに買いに行かせた俺の責任だ。
手を額にあてて、深く考えこんでみる。
―――ひとつの結論に、辿りついた。
男の食料を奪った罪は、重い。
「なあ、バーディ」
返事は、なかった。
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