〜お伽話〜
椅子に腰掛けて、低くうなだれている。
「…怒ってないから、話聞けよ」
つとめて優しく声をかけると、微かに頭が上がった。
バーディの金色の髪の毛が、揺れる。
「お前、今日飯抜き」
多分俺の顔は満面の笑み。
輝かしい位の、何かとりついたモノが祓われたくらいの。
その時のバーディの顔を、俺は一生忘れないだろう。

俺は勇者じゃないから。
主人公にはなれないから。
そんなもの
一生望まないから。
だから、お願い。
だから――――。

朝起きると、腹がなった。
何も入ってない腹を撫でながら、ようやくパンをかじる。
結局昨日、俺も何も食べなかった。
始終あんな顔をしたバーディの前で、食えるわけがない。
ベッドの上に置かれた小説を本棚に片付けながら、返事を出る。
二階の二つの部屋は俺とバーディの寝室。
バーディが眠っているであろう部屋をノックすると、中から声が聞こえた。
「バーディ?起きろー」
ドアを、静かに開ける。
中では、バーディがベッドの上で伸びをしていた。
「……腹へった」
「第一声がそれかよ」
シーツをなおしてやりながら、かじりかけのパンをバーディの口につっこむ。
バーディの髪の毛は、寝癖がつきまくっている。
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