『サヨナラユウビン』
靴をローファーに履替えて、再びカギを閉める。

「ごめんな…」
「あはは、悠也っておっちょこちょいなんだねぇ」
「い、いや、急いでてさ。…あ!遅刻する!」

慌てて香織を見ると香織はきょとんとしていた。

「…まだ50分位あるよ?学校に急ぎの用事でもあるの?」
「…へ?」

ちなみに、俺の家から学校までは徒歩20分位。
だって時計…時間…
…えぇ?

「あ、じゃあ今までバレなかったんだ。
私ね、この前悠也の家に行った時、遅刻しないようにって時計を進めておいたのです!」
「なっ…」

そういうことかぁ…
やっぱり香織は将来いいお嫁さんになるよ、絶対。

「さんきゅ、香織」

黒くて綺麗な髪を撫でると、香織は、子供じゃないんだからって困ったように笑った。

幸せ、だけど。

あと6日…

…脳裏に離れない。
こんな普通に暮らしてるのに、死ぬわけない。
…けど、やっぱり…どこかで信じてしまっている。

「どうかした?」
「え?あ、ああ、なんでもないよ」

とにかく、今日を終えよう。
大丈夫、香織が居れば…こんなの、忘れられる。

俺は香織の手を握って、ゆっくり学校に向かった。
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