彼は…彼女は…
「んー。私、嫌われ者だから。」
彼女は、また窓に目を戻しながら言った。
「お母さんもお父さんも、事故で死んじゃったの。」
「お父さんの方のおばあちゃんに引き取られた。だって、みんな死んじゃったんだもん。」
「でもね、出て行けって言われた。お前の顔なんて見たくないって。お金は出すからって。」
「だからね、遠いこの高校に入ったの。」
「でも、この高校に入ってよかった。」
「だって、だってね?」
「おい。」
喋り続けている彼女に声をかけた。
様子がおかしかった。
「泣けばいいじゃん。」
彼女は、泣くのを我慢しているようだった。