愛生
でも零れない。

あ、零れそう。

瞬きをすると睫毛に涙がついて重くなる。

ぎゅっと目をつむると涙が零れた。

なんだ、私、泣けるじゃん。

悲しいんじゃん。

佐藤を傷つけて反省してるじゃん。

私、感情あるじゃん。

あー、もう最低。

傷付けた側なのに、泣くなんて。

「ごめん。嫌じゃなかったよ」

言えた。

言えるだよ。

だって口はあるし。

私にも感情はあるし。

罪悪感だって感じまくってる。

「別にそーゆうのいいからさっ」

私の方を向いて笑った彼の目はやっぱりとてもさみしそうな目をしていた。

「・・・違う」

私の否定は彼には聞こえただろうか。

聞こえなかったかもしれない。

同情とかじゃないんだよって

好きなんだよって

言わないといけないのに。

また泣きそう。嘘

もう涙は止まった。

出てこない。

女優さんとか本当に尊敬しかける。

尊敬はしない。

ふふふ。

どーすればいいのか、さっぱり。

私が脳みそが2つになってるのを感じられる程に

考え込んで脳みそ吐きそうになった時に

野々垣さんが教室に入ってきた。

「ねーねー」

呼ばれて振り向くとルーズリーフに

「何があったの?」

と書かれた。

筆箱からシャーペンを取り出してメアドとケー番を書いた。

言いたい事は分かってくれたようで

「ありがとう」

と言われた。
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