愛生
翌朝起きて、いつも通りに家を出たのに

いつも私より先に居るはずの佐藤は今日もやっぱり居ない。

いつもは鬱陶しく感じていたはずなのに

それすらも愛おしい。

憂鬱だな。

今日、学校行きたくないな。

めんどくせーし。

委員会あるし。

つまんないし。

泣いちゃいそうだし。

キャラじゃねーっつーのー!

・・・え。ちょっとまって、私ってば恋愛してる。

あははは・・・馬鹿、じゃねーの。

いや、馬鹿だけど。

このまま、ずっと話さないで学校も別々になって

それぞれ家庭ができたりして

同窓会とかで会って

あの時はごめんねって笑おう。

それでいいじゃないか、私。

それがいいじゃないか、私。

私まだ子供だし

これから人生長いし

まだたくさんの人に出会っていくし

その中の人に恋するかもしれないし

佐藤にこだわらなくてもいいじゃない。

佐藤だけが男じゃないんだし。

いいんじゃない!

よっしゃ、学校行こうっと。

ようやく佐藤がいつも私を待っていた場所を離れ

学校に向かう。

走って向かえば、偶然にでも佐藤の姿が見えるかもしれない。

って・・・もうー。

今さっき、もう佐藤は好きじゃないって。

もう泣かないって。

もう好きって言わないって。

もう野々垣さんに嫌われないようにするって。

決めたじゃないか。

よし、ゆっくり行こう。

私のペースで行こう。

会ったら好きって言っちゃいそうだし。
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