愛生
そして誰かが先生を呼んできてくれたようで

ある程度落ち着いたら

立たされて保健室に連れて行かれた。

誰がそばに居てくれたかはわからなかった。

またいじめられるのだろうか。

そう思うと可笑しくって

気味悪く口角をあげてみた。

今顔は見えないけど

究極的に気持ち悪いのはわかる。

「あっはっはっは」

声だけでも笑って見せようとしてみるけど

だめだった。

笑えない。

いつも佐藤がうらやましかった。

あんなふうに笑えたら、といつも思っていた。

私もまた笑いたい。

私にだって感情はあるのに

嬉しいとか楽しいとか面白いとか

愛想笑いだってできるようになりたい。

無表情でいる事に疲れる事はないのかと

問われる事もよくあった。

私は笑っている事程疲れる事はないと答えた。

嘘だった。

「加藤さん、お迎え呼んだから今日はお帰りなさい」

先生が鞄をもってきてくれて玄関まで見送ってくれた。

おかんに鞄を渡し助手席に乗り込む。

おかんは泣いていた。

自覚していないのかもしれないけど。

おかんの泣き方は泣くというより、涙を流すって感じだ。

声も出さずにただ涙を流しているだけ。

「ないて、るよ?」

自覚してるかしてないかわからなかったので

教えてあげた。

するとおかんは頬に手を当てそれを確かめるように舐めた。

すると今度は笑った。

流石に、気味が悪いと思ってしまった。

私が言える事かよ、と誰もつっこんでくれないので自分でつっこんでみた。

「どこ行く?」

おかんが問う。

「できれば家に行ってほしいんですけども」
< 21 / 21 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop