マジックストーン
「だっておれのストライクはキレイ系より可愛い系だから仕方ねえだろお?」
「じゃああたしはフォアボールってことーっ?!」
叫ぶ梨海ちゃんの声は今の体育館には響かない。
「そんなこと言ってねえじゃん」「そういうことじゃん」「違うって」
隣からそんな声が聞こえてくる。私もあのくらいクラスの人たちと話せたらな、と考えていた時。
ぽん、と頭に何か乗っかった。
ゆっくり見上げると、そこには優しい笑顔の神崎先輩。
「優衣ちゃんあれ誰」
笑いながら神崎先輩が指差したのは梨海ちゃんとタカジくん。
「同じクラスのタカジくんです」
「ふーん」
「知り合いですか?」
「いやあ?」
神崎先輩が聞いてきたのにそれほど興味を示さず終わってしまった。
なんだかいつもと様子の違う神崎先輩は、これまためずらしく私と話そうとしない。
会えばいつも、『ゆーいちゃーんっ淋しかった?会いたかった?』って聞いてくるのに。
「………神崎先輩?体調でも悪いんですか?」
見上げた私とかちりと視線があった神崎先輩は「どうして?」と質問を質問で返されてしまった。