マジックストーン
「元気ないですよね?」
だいぶ曖昧になってしまったのはそれに確信が持てなかったからだと思う。
そんなことない、って言われたら納得しちゃうくらい。
「すごいね優衣ちゃん。正解だよ。今俺ね、元気ないんだあ、優衣ちゃんの所為で」
「えっ………?」
開いた口が塞がらない状態に陥った私は瞬きを繰り返しながら神崎先輩を見上げるしかない。
一生懸命私が何をしたのかと考えを巡らせてみるけれど、これといって思い当たる節はなくて困ってしまう。
「あははっ。そんなに困んないでよ」
「だって……」
困らせたのは神崎先輩ですよっ、と言う前にふわりと神崎先輩の香り。
「祥也って呼んでくれたら元気になるかも」
そう耳元で囁く神崎先輩は私の頬に唇を寄せた。
「きゃっ……。神崎先輩止め――」
「あれえ?優衣ってホントに先輩と付き合ってたんだ」
梨海ちゃんと話していたはずのタカジくんが、梨海ちゃんと一緒にこっちを見ていた。
「優衣ちゃんの彼氏で――」
「ち、違う違うっ」
慌てて両手を振りながら否定すればタカジくんは「ふーん」とだけ言ってから、
「ま、おれは優衣狙ってないから安心してください?せ・ん・ぱ・いっ」
言葉と一緒にウィンクを飛ばした。