マジックストーン


 怒られるのかな?なんて、頭が下がっちゃうくらい思い詰めていて。

 ため息をつきながら早足で廊下の角を曲がれば、トンッと誰かにぶつかった。

「きゃっ…」

 小さな悲鳴を上げ、転ばないように足に力を入れる。

「ご、ごめんなさい…。私、少し急いでて」

「大丈夫?」

 ぶつかったのは、緑の校章をつけているあたり3年生だと思われる男の先輩。

 軽く会釈をして謝れば、くしゃりと破顔させた。

「はい。大丈夫です。あっ、それでは」

 その人に釣られて微笑み、再び軽く会釈をして職員室に急いだ。

 結局、放送で私を呼んだ先生は音楽の先生で。

「頼まれた?声楽部の伴奏を?」

「……うん」

 その音楽の先生は、声楽部の顧問。

 今度、市で開催する音楽発表会に、この学校の声楽部が出るみたいなんだけど……。

「伴奏者が骨折ねぇ……。で、その代わりってこと?優衣が?」

「そうみたい……」

「どうせ優衣のコトだから、断れなかったんでしょ」

「う"ぅ……」

 だって、だって!!

 先生に困った感じの表情で『お願いできない?』って言われちゃったんだもの。

 断れるわけないじゃない?


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