マジックストーン
足音が増えないことに気付いたのか、神崎先輩は不思議な顔をして振り返った。
「優衣ちゃん?」
ずいっと端正な顔が近づいて来るのに耐えられないのもあったけど、怖いものには勝てなくて俯いたのと同時に神崎先輩の体育着を両手で掴んだ。
「………せんぱっ」
「えっ? な、なにっ?」
眉を寄せて神崎先輩を見上げてから、急いで神崎先輩の背中に回りくっついた。
「ちょっ……優衣ちゃんっ?!」
「せせせせ、せんぱっ!!!」
「どうかした? 告白なら嬉しいけどもっと雰囲気とかさ、考え――」
「おおお、おばけっ!」
ぎゅっと抱きつかんばかりに体育着を掴み、恐る恐る不気味な声がした方に指を差す。
「え?」と素っ頓狂な声を上げた神崎先輩は「うそだあ」と呟いた。
「だって……変な、不気味な声が聞こえたんですよ?絶対、おばけ……」
「………不気味な声ってどんな声だった?」
「えっと……」
「アアッ! って感じじゃなかった?」
ぴくりとなった私を察してか、神崎先輩は「やっぱねえ〜」となんだか納得してるみたい。