マジックストーン
「困らせてしまってすみません。神崎先輩だって必要ないって思いますよね」
「えっ……あのね、優衣ちゃん。俺――」
「ショーヤーッ!!」
神崎先輩の言葉を遮ったのは、梨海ちゃんよりも明るい茶色い髪の毛の男の先輩。
何ていうのかな。少し長めの髪の毛が鶏の鶏冠(とさか)みたい。
「お?カワイイ子連れて試合の間に一発ってか?さすが、天下の色おと――」
「もう決勝?」
「決勝の前に体力消耗してどーすんのさ。もしかして下から眺めるカンジー? ――ん? でもこの子、ゆっさゆっさには足らな――」
「チアキ」
ため息まじりに神崎先輩は、名字とも名前とも取れない言葉を投げた。
「おっと。こりゃあ、シツレー。佐竹千章(さたけちあき)さんねんせーでーすっ。ショーヤとはねー、かれこれ3年のお付き合いかなー」
………何ていうのかな。神崎先輩の遥か上。ものすごく自由な人。
ぺこっとお辞儀をしてから、神崎先輩を見上げれば「ごめんね」と謝られた。
「決勝、勇がいれば平気だろ?」
「それがさー。ショーヤが来ないなら出ないって。だから困っちゃーう」
まるで女の子が駄々をこねるみたいに、神崎先輩の腕をぎゅっと握って揺さ振る。しかも上目遣いで尻尾が見えそう。